アフタースクール






のっけから非礼な言い方になってしまいますが、準主役級の3人(大泉洋・佐々木蔵之介・堺雅人)で大掛かりな宣伝もなく(いちおーTBS資本も入ってるみたいだけど)上映する映画館が80箇所しかないという不遇ぶりなのに、それでも口コミで相当ヒットしたようで何よりです。だってこんなに抜群な内容で、見事に騙されたもん!こんな衝撃は「スティング」以来かもしれないなあ。で2回も見て、その間に小説版も読んで、時系列で感想を書きたいと思います。

☆1回目
全く予備知識がないので、最初のシーンはどう見ても堺雅人と常盤貴子が夫婦で、初老のオヤジは常盤貴子の父親にしか見えないんだよね。でもって、大泉洋は佐々木蔵之助から「お前アイツの事何も知らないだろ?」と言われ衝撃を受けて、「さあどういう展開がこの後待ってるんだ?」というのが前半部分でしたが、後半に入り、いきなり堺雅人が大泉洋の家に戻って来ていたり、携帯の留守電に『探偵がお前を探してるぞ!』」なんて入っているじゃないの!

ここから「うわー!今までのは全部ウソだったのか!」とビビってたじろいだね!ウソという言葉が適切じゃなければ、「事実は見せてたけど真実は見せてない」って事で、この脚本の凄さにはマジで鳥肌全部たったよ!でもって田畑智子演じる「謎の女」がヤクザの探してる『あゆみ』かと思いきや、彼女は大泉洋の妹で警察官!『あゆみ』は常盤貴子??それでちゃんと前半もつじつまが合ってるんだから凄いねマジで!!

で最後に大泉洋が言った「今の環境がつまんないと思うのは環境のせいじゃなくて、お前のせいなんだよ」というのは凄く共感できたよ!そして常盤貴子と夫婦になって一緒に赤ちゃんを育て、もしかしたら堺雅人と田畑智子はいずれラブラブになるのかな〜という最後は奇麗に終わるエンディングも最高だったしね。「クロサギ」を例外とすれば、もしかしたらこの作品が今年ナンバーワンになるかもしれないなあ。(クロサギは原作ベースでテレビドラマから映画になったから、事前の期待が凄かったので比較しちゃ駄目かな〜という思いが強いのです)

☆小説版
開始早々から張りまくられた伏線をどう上手に表現するのかと思ったら、何と複数の登場人物が交互に語り部となる「変則一人称」じゃないか!これなら前述した「事実を提示し、なおかつ後半まで隠しておきたい真実は伏せていられる」もんね。でもってお約束だけど、小説ならではの登場人物の心情描写も絶妙だし、何より映画にはなかった「最後に3人で食べる朝ご飯」のシーンなんかぶっちゃげ改竄なのに全く違和感ないんだもん。

☆2回目
パンフと小説とネットで予備知識を存分に仕入れて、伏線を見抜くぞ!という気持ちも持ちながら劇場へ足を運びましたが、序盤からもう「お前ら気持ち良く騙してやるよ!」という監督の意気込みがビンビンに感じられたね。最初のシーンでも、警官のオヤジに対して父親か?と思わせる会話かと思いきや「お父さん」なんて一言も言わないし。で佐々木蔵之助に成り行き上協力しても核心部分は見事に隠して騙す訳なんだもんなあ。

そして「あゆみ」をうまく殺した事にして消せばヤクザからは追求されないし、真実を知った探偵は警察に捕まるし、どこまでも最後には伏線がキッチリ埋まり、ちゃーんと穴のないハッピーエンドになってるんだから、これこそ何度見ても飽きないかもしれないなあ。