クヒオ大佐





ここ数年の堺雅人の活躍は、「アフタースクール」を筆頭に素晴らしいものがあるので、今回も「実在した結婚詐欺師」を演じるというから、『スティング』のようなコン・ゲームが大好物のボクとしては、非常に期待してたんですけど、正直ちょっと物足りなかったです。

というのも、事前の宣伝とは異なり、同じ結婚詐欺師でも、クロサギ流に言うなら「三流のアオサギにすらなれなかった奴」というスペックの役だったからです。もちろん、そういったヘタレ詐欺師を演じる姿は好演だったけど、ボクが見たかったのとは違ったんだよね。

おまけに、「何でわたしなの?」と言われるように、騙す相手は言っちゃ悪いけど地味でお金もない女ばかり。銀座のホステスに食指を伸ばしてみれば、裏で警察に「この名刺、スペルが3箇所間違ってる」と一発で見抜かれているし。これで本当に、今まで成功していたのか?

まあ女性の側に立ってみれば、地味な私に好意を寄せてくれる・・・というお決まりのパターンで金を貢ぐというのはありがちなパターンだけど、それでも詐欺師の仕事としては、アガリは少ない苦労は多いと、いい事まるでない。まして前述した「クロサギ」で、さんざんシロサギの手際の良すぎる騙しのテクニックを見せられてるボクからしたら、クヒオ大佐がなぜ題材に選ばれたのか?その辺からして、そもそも不思議なんだよね。

最後は逮捕されて終わる訳だけど、史実(と言っていいのかな?)でも逮捕されているらしいから、どうせ映画にするのであれば、逮捕されるまでの没落寸前落ち目の詐欺師よりも、全盛期に女を騙しまくった痛快コン・ゲーム映画にしてほしかったというのが、ボクの願いであります。

蛇足ながら、「容疑者Xの献身」では一介のパートさんだった松雪泰子が、本作では同じ弁当屋でも何と社長!出世したんだね〜。なのに騙されて会社の金渡しちゃって、社員に給料払えないんじゃ、そりゃあ心中しようと考えちゃうよなあ。でもあの光景、「失楽園」に似てないかい?(笑)本編がイマイチな分、こういった小ネタをあら探しして楽しむしかないのが、本当に残念でなりません。