クロサギ






待ちに待った「クロサギ」の映画版であります。ドラマに超ハマっていて劇場版制作決定に喝采を禁じ得なかったボクとしては非常に嬉しい限り。と言うのも、ボクが洋画でいちばん大好物な「スティング」のような詐欺師を主人公とした『コン・ゲーム』を主体としたドラマの映画化とあって、カモも視聴者も騙すという抜群の映画でしたね。もちろん「やられた!」という点ではイイ意味でも悪い意味でも言えるけど。

まずイイ意味で裏切られたというか予想を超えてた部分について書くか。2時間という長丁場なのに、あくまで山Pと山崎努と竹中直人の3人を中心とした濃密な虚実入り乱れた人間模様を一気に描いていた点。親の仇であるのに「シロサギ喰うため」情報を買う相手に日本刀を向ける光景が何度もあったけど、あれって本気なのかお遊びなのか、殺意があったのかなかったのか?かなり微妙でもの凄く深読み出来るシーンだったもん。

そしてストーリーの中核を占める竹中直人との絡み。オセロを触媒にして懐に入り込む芸当は凄いよ!しかも1回騙した相手で面識あるのに、変装が見破られないのはまあ許すとしても、ああもあっさり信用されちゃうのも、もしかしたら終盤でどんでん返しがあるのかな〜とラストの対決シーンまでドキドキものだったよ。(そのきっかけが「営業」ってのは何だ?あんな簡単に社長に辿り着いて契約を成立させるなんてアリか?と元営業マンとしては思ったけど、その辺はまあ許すか。向こうは最初から購入代金踏み倒すつもりで契約したんだろうし。)

それにしても、竹中直人をハメるのに「手形詐欺」を逆手に取って潰すなんて凄いよな。その前に使った「電子マネー詐欺」なんてのを思いつくのも凄いけど(実際これマネする奴出てこなきゃいいけど、実際こうやってマネーロンダリングする奴いるんだろうなあ。EdyやSuicaとか使って)手形を偽造して敵対(?)する暴力団の下部組織の金融屋に買い取らせるなんて凄いじゃん!今までの報いを受ける形になって、前田流に言えば「因果応報ざまあみろ!」って感じでしょ。

それはさておき、よくもまあ山Pはハイテク技術に造詣が深いもんだとつくずく関心しましたね。ニセ電子マネーサイトを自作して自分の口座へ金を振り込ませたり、携帯を圏外にする装置を作ったり、あげくキッズ携帯の機能を利用してニセ携帯を作ってすり替えて騙すなんて、これはもう手先が起用ってレベルじゃないよ!

でもって、今回の依頼人の飯島直子!その動機が「子供のため」って言うのは思いっきり反則だよ!そりゃあ山Pだって心臓移植のために奮闘するって!しかも直接手渡しじゃなく「いつも会う場所」へお金を置いて行くなんてカッコ良すぎるにも程があるよ!これで無事移植手術を受けられる事になった訳だけど、やっぱり「金がないと高度な医療は受けられない」って言うのは非情だねえ。

あとオープニングは予想通り「シロサギを喰う」所から始めるっていうのはもう定番だね。でもまさかここで杉田かおるが出て来るとは思わなかったなあ。ドラマ最終回で釈放されて、もう詐欺の世界から足を洗ったかと思ったら、今度は「獄中で学んだ」盗難車詐欺やろうとして、その裏をかかれてまたムショへ逆戻り。ナンバープレートが全部同じなんて思いっきり笑ったよ!でもってトレーラーに『毎度あり!』の決め台詞!このスタートで「クロサギが帰ってキター!」と狂喜するスタートだったもん。

少し残念だった所も書くか。前述したように、3人が主軸の映画だけあって、ドラマ版からの他のレギュラーメンバーの扱いが単なる脇役でしかなかったのが残念だったなあ。堀北真希や市川由衣は「恋愛要員」だから今回の映画のテーマから考えて外れるのはまあ仕方ないけど、ボクが期待した加藤浩次とのタッグで竹中直人と対決っていう構図にならなかったのが残念!大体予告で「日本経済を脅かす史上最大の『詐欺犯罪』が動き出す。比類なき巨悪に、たった一人で挑む黒崎の運命は?」って言う割にはそこまで大仰なスケールの話だったら山P1人じゃ無理だからここは「なぜか味方っぽい」加藤浩次の出番なのに、遊園地で喝を入れるくらいしか活躍しないんだもんなあ。

でもって、映画の合間に出て来た意味不明の男が実は竹中直人の黒幕って言うのはどういう事だ?全く何の伏線もなくいきなり哀川翔に「もっと大物を逮捕したよ」と言われたって、そりゃあ山Pじゃなくても「はあ?誰それ?」と思うのは当然だって!オセロ好きな酔狂なオッサンが実は黒幕なんてどういう脚本なんだよ??でそれを隠す山崎努も極悪だなあ。

あとこれは余談だけど、主題歌がNEWSの新曲になったのは少し残念だったなあ。あの歌はそれなりに悪くはないんだけど、「踊る大捜査線」が映画になった時、織田裕二の主題歌を「シネマ・バージョン」にパワーアップさせたように、「抱いてセニョリータ」も「シネマ・バージョン」にしてほしかったなあ。だって劇中で流れたら思いっきり沸点超えて「鳥肌全部立った!」って感じだったもん。聞き比べたら、そりゃあ「抱いてセニョリータ」が勝つって!

でラストが実はオープニングからの続きって言うのは何だ??オープニングで「標的」を追いかける光景だって言うのはよくあるパターンだけど、あれってずーっと竹中直人だとばかり思ってたら、実は仇敵の岸辺シローだっていうからビックリ!これで続編制作はよほど興行収益が悪くない限りは確定だろうけど、時期はいつになるのかな?原作でまだ決着ついてない以上、それを待つのか?それとも「AKIRA」みたく連載を休止させてまで原作者を交えて『完結編』の脚本を作って先に劇場で話を終わらせ、それからマンガ版でも最終回に持って行くって言うパターンもあるけど、一体どっちになるのかな?

最後に蛇足ながら、この映画のパンフは凄い!ドラマで扱われた詐欺だけでなくマンガで扱った詐欺の手口を公開した挙げ句、原作者にもインタビューで「最近の詐欺の傾向」を語らせるなんて凄いよ!山Pも言うように「ある意味この話を手本なり反面教師にして、騙されないようにしてほしい」よね。『美味しい話はアカの他人がわざわざ持って来る筈がない』というのは永遠の真理だから。