アンフェア the Movie






この映画は決してアクション映画ではありません。ズバリ言って

母と娘の親子愛を描いた感動作品

であります。だから「内通者は誰だ?」とか「これダイハードのパクリか?」なんて無粋な事を言ってはいけません。強いて言うなら「日本版サドン・デス」って所でしょうか。だって雪平のテレビ版での「刑事度:母親度」が1:9、SP版が2:8だとしたら、今回の映画版は見事に逆転して7:3くらいになってるもん。その証拠にオープニングの爆弾テロの時だって、テレビ版だったら速攻で拳銃取り出して「犯人はどこだ?」ってなる所なのに、

早く救急車呼んで〜!!(泣)

これが敏腕刑事か?でもいいんです!警察官としては失格でも、母親としては合格です!だって娘が事件に巻き込まれて「犯人を追え!」より娘への愛情が勝ってるんだもん。だから中盤にガラス越しでの再会シーンなんかボクも娘を思い出してもらい泣きしそうになったし。でもってバースデーカードを差し出され

「ダメなママでごめんね」「ママはダメなんかじゃないよ」

これを言われて子を持つ親は何とも思わない訳ないよ!でもって直後に「娘を助ければ解毒剤を用意するよ」なんて言われてもフザケンナ!(怒)って感じだよ!「誰も信用しません」そりゃそうだ!負けるな雪平!って感じでしたね。そして無事に事件を解決させ、娘に解毒剤を与え「目を覚まして〜(泣)」なんてもう感動のエンディング。だからその後のヘリポートのシーン以降は蛇足と言うか何と言うか。

「この事件が終わったら警察辞めるね」「辞めないで悪い人捕まえて」子供はちゃーんと親の背中を見ているって事なんです。ていうか、働いて子供と接する時間が短い身としては、やっぱりこうやって親の事を理解していてほしいものです。まあ理解してもらえるようボクも頑張るけど(苦笑)





と、ここまでは純粋な感想。ここからはネタバレ評価を兼ねたツッコミ入り感想を箇条書きで。

・オープニングがヘリポートで、すぐに密輸船捜査。何で?と思ったらエンディングへの伏線だったって事か〜。おまけにその密輸船捜査の解決後に江口洋介が言った「終わり良ければ全てよし」もラストへの伏線だったなあ。

・病院乗っ取り事件が発生してやってきた寺島進!相変わらずカッコいい!でもテレビ版からの流れで行ったら、濱田マリが入院してる病院だって知ってる筈なのに、その事に全く言及しないのは何故だ??おまけに人質が解放された時に「加藤ローサと美央ちゃんだけ行方不明」って言ってたけど、それも不自然だって!まあ病院の入院患者データから自分の事を抹消してたって言うのも彼女のスキルなら可能だろうから、「そういうことだよ」(by高田総統)って事か?

・せっかく出演した加藤ローサを簡単に序盤で殺すなよ!でも美央ちゃんを助けようと自分の身の危険を顧みない職務を超えた行動には「お前女だよ!」と絶賛したくなりましたね。それを思うと、本当にもっと出番を増やしてほしかったよ。

・最初に突入したSATが首謀者の椎名桔平とグルだったのは、まんま「ダイハード2」のパクリだったなあ。でもって2番目に突入したSAT隊は同僚なんでしょ?よく簡単に殺せるよな。それともSATの中にも「班」とか「課」とかグループがあって、常にグループ単位で行動するんでしょうか?

・その乗っ取りグループと合流した濱田マリ。SPのラストでケロリと立ち上がりデータを渡してたあたりから怪しいと思ってたけど、やっぱり犯行グループに加担してたのか〜と思ったら、終盤でアッサリ裏切り!でもってやって来た江口洋介にデータを渡し「半分の40億ちゃんとちょーだいね」何と!SPのラストでデータを渡した相手は椎名桔平じゃなく江口洋介だったとは!でもこーいう風に本人的にはうまく立ち回って漁父の利を得たつもりのポジションの人って、必ず口封じに消されちゃうんだよなあ。彼女も例外じゃなかったね。

・話の流れに逆行するけど、単身病院に突入する雪平。それはいいけど、「要塞」と言うくらい侵入が困難な施設なのに、誰もが思いつく定番中の定番「地下排水溝からの侵入」で成功するか?まあ見張り番に待ち伏せ襲撃されたけど、あんな簡単に侵入できるんじゃ防御レベルもザルだね。地上部分は対テロ用って事で防弾機能あっても意味ないじゃん。でもコート脱いでワイシャツ姿で突入するかフツー?せめて防弾チョッキくらい着ろよ!まあおかげでワンショットだけサービスカット(笑)があったけど。あの黒いのはブラかキャミか?(笑)

・テレビ版からの流れで「内通者」を設定。加藤雅也と寺島進、最初はこの2人が怪しいと思ってたけど、結局ラスボスは江口洋介!テレビ版のラスボスが安藤だった事から、雪平にしたら今回もコンビを組んだ相手が実は裏切り者だったなんてちょっと可哀想だったなあ。その安藤はさすがに回想ですら登場しなかったけど、SPの時みたいに「脳内助言」してほしかったなあ。病院内で孤独状態の雪平を励ます役回りで。やっぱり「アンフェア」に安藤は欠かせないもん。

・病原菌の取り扱いに失敗し感染した成宮寛貴をアッサリ見捨てた椎名桔平!ちょっと非情すぎると言うのは簡単だけど、病原菌に犯されて徐々に死んで行くのが分かっているなら「発病する前に殺す」のもある意味温情じゃないのか?それとも加藤ローサを殺した時「二度と失敗は許さん」と言ってたから、それを実行しただけか?おかげで美央ちゃんにも感染しちゃったじゃん!でも最後「おにいちゃんもうダメだ」って立ち上がったけど、一体どこに行ったんだ?まさか窓から飛び降りたとは思えないし(もし飛び降りてたら空気感染で周囲の警官みんな感染するって!)別室で孤独死なんて「北斗の拳」のレイじゃあるまいし・・・。

・濱田マリからデータを奪った江口洋介の前に現れる椎名桔平!この2人もグルだったのか・・・て言うか、結果だけ見れば椎名桔平は江口洋介のパシリじゃねーか!でもって口封じに殺された訳だけど、表面的には「テロリスト首謀者を退治」したって事になるから正に一石二鳥!ここで決め台詞じゃないけど「終わりよければ全てよし」って言って欲しかったなあ。

・ここからはボクとしては余計なシーンと言うか、続編やる気まんまんなエンディングだけど、ヘリポートで対峙する雪平と江口洋介!「ぼくは撃てますよ」とかいって威嚇射撃しながらも第三者に狙撃されアッサリ死ぬ訳だけど、これがオープニングとリンクしてる訳なんだよね。でも「警察の不正を暴く」というSP版からのテーマ(て言うかSP自体、映画への助走だけどね)を始めたのは実は雪平の父で、それを口封じに殺されたら安本が引き継ぎ、そこから江口洋介に繋がって、別ルートで雪平自身も機密文書探しを内々でやってた訳だけど、それを暴くのに江口洋介は警察じゃない政府系別組織の力を借りて粛正しようとした訳?そんな事して現行の警察組織が瓦解した所で、「新組織」の警察だって結局は同系列の組織になるのはミエミエなんだよな。だから「アンフェアにはアンフェアなんて間違ってる!」というテレビ版から一貫して雪平が言ってた事は合ってるんだよね。

・結局、最後に機密文書を握ってる雪平。「最後の事件」とか言いながらも前述したように続編作る気まんまんなエンディングである以上、パート2はこの機密文書を巡る展開になるんだろうなあ。でもそんな機密文書がUSBメモリに入る程度の量なのか?まあUSBメモリでもギガ単位の容量なら問題ないんだろうけど。

・そうそう、まんまとせしめた裏金の80億。まさか「寄付した」なんてオチになるとは思わなかったなあ。江口洋介も私利私欲で金を巻き上げた訳じゃなかったって事で、その辺は良心があったんだろうなあ。結論を言うと、「悪」を自覚している犯罪者より、「正義」のために法を犯す方がよっぽど怖いしタチが悪いって言う永遠の真理をこの映画も体現してみせたって事かな?